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<もう限界 保育現場のいま>(中)経営脅かす人件費 国の基準、底上げ不可欠 - 東京新聞

 「本当は、ベテランの給与をもっと上げたいけれど、これが限界なんです」

 大阪府東大阪市社会福祉法人「どんぐり福祉会」専務理事の乾みや子さん(66)は、給料を上げられない事情を心苦しそうに話す。

 同会が運営する私立認可園「どんぐり保育園」にはゼロ~五歳児七十二人が通っており、正職員十四人とパート十人がシフトを組んで保育している。正職員は、主任や副園長などの役職に就かなければ、およそ十五年で昇級が止まり、月給は額面約二十九万円で頭打ちとなる。

 短大や大学を卒業後、意欲を持って保育士になっても、自分の子の教育費がかかるようになる三十代半ばにやってくる昇給停止。「人生設計が難しい」という声が保育士から上がる。全国二万四千五百カ所(二〇一四年)ある認可園の半数強を占める社会福祉法人の経営園で、共通の悩みだ。

 園の収入は、保護者が支払う保育料と国費からなる「公定価格」のほか、一部自治体には独自補助金がある。乾さんは「公定価格が低すぎるのが、昇給を止めなければいけない原因」と指摘する。

 同園の昨年度収入は公定価格約九千六百万円と、市の独自補助金約二千五百万円。支出は71%が人件費、残りが給食の食材費や光熱費、〇四年に園舎を建て直した際の借入金の返済、折り紙などの材料費だ。

 人件費比率が高いのは、園児の年齢ごとの保育士人数を取り決めた国の最低基準を上回る人数の保育士を雇っているから。公定価格は、保育士人数の最低基準などに基づいて算定されており、園が独自に人数を増やす場合、保育士一人一人の給与を減らして対応せざるを得ない。ただ、最低基準の保育士しかいないと、「子ども一人一人に寄り添った保育は難しい」と乾さんは指摘する。

 例えば、同園では、各十三人いる四歳児と五歳児は、クラス担任を置くことができなくなってしまう。保育技術を上げようと保育士を研修会に派遣するにも、余裕のある保育士の人数が必要だ。「お金のやりくりはいつもぎりぎり」(乾さん)

 一方、さいたま市の私立認可園「こぐま保育園」は、支出の82%を人件費が占める。だが、勤続三十年以上のベテランでも、月給は額面約三十万円にすぎない。

 人件費比率が高い割に月給が低いままなのは、一歳児四人に一人の保育士を付けているから。国の最低基準では六人に一人だから、大幅に上回っている。

 「一歳児は、つかまり立ちの子や、昼寝を二回する子、走り回って言葉で意思疎通できる子までいる。落ち着いて保育をするために必要なんです」。園長の増永久美子さん(55)は話す。

 同園では、節約が習い性となっている。プールの水を節約するために循環式にし、窓を開け放ってできるだけ冷房を使わない、不用品のバザーで売れ残った机や書棚を使用している。とはいっても、人件費に比べれば、わずかな額でしかない。一三年の園舎建て替え時の借入金返済も重くのしかかる。

 保育士の人数を増やし、技術の優れたベテランを配置するなど、保育に十分な環境を整えようとすればするほど、園経営の首を絞める悪循環。「国が責任を持って、職員配置の最低基準と公定価格を見直すべきではないでしょうか」。乾さんは語気を強めた。