保育士求人・転職情報も満載!保育業界について考えるブログ

保育士、保育園、保育業界に関する様々な情報をまとめています。待機児童問題や転職が多いとされる保育士の待遇問題など保育業界を取り巻く問題に鋭いメスを入れ、社会全体で解決していくキッカケ作りをしていきます。

保育士給与引き上げ…「励みに」「もっと評価して」

現場環境も議論を…1億総活躍プラン

 

 政府が18日決定した「ニッポン1億総活躍プラン」案には、待機児童解消を目的に、保育士の給料引き上げなどが盛り込まれた。

 

 保育の現場からは、「励みになる」と歓迎する声が上がる一方、働く環境のさらなる改善も求められる。

 盛り込まれたのは、全保育士の月給のうち国が負担する部分などの2%(約6000円)引き上げや、経験を積んだ保育士の月給の4万円程度の引き上げなどだ。来年度から実施する。

 国は2014年、保育士の月給を5%引き上げる方針を決め、15年度に消費増税による財源で3%を引き上げた。今回残り2%を、消費増税以外の財源で引き上げることにした。また、保育士の平均月給は、他の職種の女性労働者より4万円少ないため、この差をなくすとした。「経験を積んだ保育士」の具体的な条件などを今後決める。

 「勤続10年で月給は手取り18万円くらいなので、待遇改善は励みになる」と話すのは、東京都内の認可保育園の保育士(30)。書類作成などの残業や自宅への持ち帰りは日常的という忙しさだ。「『思い通りの保育ができない』と退職する人も多い。給料アップで保育士が増えればいい」

 全国保育士会副会長の村松幹子さんは、「辞めた保育士には『待遇が良くなれば働きたい』という人も多く、復帰につながる可能性がある。ただ、全員が6000円引き上げられても、他の業種との差は大きい。専門職である保育士の仕事に見合う額にしてほしい」と話す。

 なぜ今、保育士の待遇改善が必要なのか。

 国は待機児童解消を、少子化対策や女性活躍の柱に位置づけている。将来の労働力不足が懸念される中、子育てしながら安心して働けることが重要だからだ。待機児童解消には、保育の定員を増やす必要があるが、保育士が足りない。その大きな理由として、賃金の低さが指摘されていた。

 千葉県船橋市の認可保育園「薬園台・学びの保育園」は4月に開園した。運営する社会福祉法人理事、五島美紀さんは「保育士を集める際、市の支援で待遇に配慮できたのが大きかった」と話す。定員約70人、保育士は常勤13人、非常勤4人。

 同市は、私立保育園に対し、月額給与や期末手当に上乗せの補助をするほか、雇用後5年間はアパートなどの家賃補助もある。乳幼児がいる保育士に対しては、保育園に優先的に預けやすくしている。「他の地域でも園を作りたいが、待遇面や働く上での支援がないと保育士は集めづらい」と五島さん。

 4万円増は女性労働者の給与を基に算定された。男女合わせた額では、11万円以上の差があり、縮めるのは容易ではない。

 1億総活躍プランでは、「未就学児のいる保育士の優先入園の徹底」「保育士を目指す学生のための奨学金制度の充実」などもうたう。また、国は3月に待機児童解消の緊急対策をまとめ、小規模保育所の定員拡大などを掲げている。

 関西大学教授の山縣文治さん(子ども家庭福祉論)は、「保育士が社会的に重要な専門職であることを社会がもっと評価し、保育士自身も質を高めていくことが重要。待機児童解消のために、総合的な対策を取るとともに、長時間労働など働き方の見直しの議論も進めていくべきだ」と話す。(吉田尚大、小野仁)


■保育士は不足している

 保育士の有効求人倍率 2.21(東京5.45)

 全産業の有効求人倍率 1.23

 (2016年3月)

■保育士になってもやめる人が多い

 保育士の勤続年数 7.7年

 全産業の女性の勤続年数 9.4年

■保育士の賃金は低い

 保育士 月21万9000円

 全産業 月33万3000円

 (2015年)

 ※ニッポン1億総活躍プラン、厚生労働省の資料から