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騒音、渋滞、マナー… 保育所は迷惑施設? -大阪日日新聞-

自治体は対策に苦慮

 保育所を巡るトラブルが全国で相次いでいる。大阪府内でも「子どもの声がうるさい」「親の送迎マナーが悪い」などの苦情が目立ち、住民の反対で建設が難航するケースも出ている。保育所は迷惑施設なのか-。現状を探った。

 大阪市鶴見区の住宅街。真新しい保育所は遮音壁を張り巡らせた。陽光が差し込む窓はない。

 「やむを得なかった」。市の担当者は声を落とす。住民の反対に遭ったが、騒音対策などを充実することで合意にこぎ着けた。

 孫を通わせる女性(72)は「健全な成長の妨げにならないだろうか」と戸惑うが、近所の男性(78)は「静かな日常を守りたい気持ちも理解してほしい」と訴える。

■事故リスク

 豊中市では、4月に定員120人の保育所が開所する予定だった。しかし、周辺には小学生の通学路もあり、計画段階で住民から交通事故を心配する声が上がった。

 市は地元説明会を開催したが、住民と折り合いがつかず、建設を断念。新たな受け皿の確保を急いでいる。

 同市の待機児童数は昨年4月1日現在で253人。府内の市町村で最多だ。市こども政策課は「保育所を早急に整備しなければならないが、その土地に何十年も建つ施設であり、近隣に温かく受け入れてもらう必要もある」と苦悩を漏らす。

 保護者のマナーも課題に浮かぶ。大阪市のある保育所前では、送迎の自転車で道がふさがることも。近所の女性(80)は「母親同士が道端で長時間おしゃべりしたり、ポイ捨てするのは控えてほしい」と注文を付ける。

■日頃の関係

 子どもを預けられない憤りを「保育園落ちた」とつづった匿名ブログを機に、待機児童の解消が注目される中、保育所への風当たりは強まっている。

 大阪府内の市町村に3年間で80件余りの苦情が寄せられた。神戸市では、住民が保育所の運営者を相手に、防音設備などを求める訴訟も起こしている。

 厚生労働省の15年調査によると、子どもの声を「騒音」とした人は35%に上り、地域活動に参加していない人ほど割合が高い実態も浮き彫りになった。

 「理解を得るには住民との日頃の関係が大切」。大阪市こども青年局の担当者は説く。市内の保育所では、町内会や老人会と交流したり、園庭を住民に開放するなど、地域に溶け込む努力を重ねているという。

■「地域の宝」

 府内の自治体は住民との話し合いも続けている。合意形成したケースでは、遮音フェンスの設置や園庭位置の変更、送迎の道路を限定するといった対策を実施。大阪市などは車での送迎を原則禁止している。

 ただ、外遊びの時間まで制限している保育所もあり、園長は「住民とどう合意点を見いだすか難しい問題」と顔を曇らせる。

 トラブルを未然に防ごうと、府は近隣対策の手引を年内に作成する方針だ。騒音の基礎知識をはじめ、住民と良好な関係を築いた保育所の事例、設計面のアドバイスなどを盛り込み、府内全ての保育施設に配布する。

 府の担当者は「いろんな意見があると思うが、地域の宝である子どもたちの育ちに住民も目を向けてほしい」と話す。

地域全体で折り合いを

 山縣文治関西大教授(子ども家庭福祉学)の話 少子化で子どもに接する機会が減ったり、防音重視の住宅が増えたことも背景に、子どもの声をうるさく感じる人が増えたのではないか。次代を担う人口が減れば、年金や介護などの制度が危うくなるということを住民は意識する必要がある。住民と保育所の利害を調整する行政機能の強化に加え、地域全体で折り合いをつける方法を考えていくことが大切だ。