保育士求人・転職情報も満載!保育業界について考えるブログ

保育士、保育園、保育業界に関する様々な情報をまとめています。待機児童問題や転職が多いとされる保育士の待遇問題など保育業界を取り巻く問題に鋭いメスを入れ、社会全体で解決していくキッカケ作りをしていきます。

<もう限界 保育現場のいま>(上) 低すぎる賃金 - 中日新聞

 「手取りの月収は十三万円程度で、生活はギリギリ。子どもたちのための貯金もできない」

 埼玉県内の認可保育園に勤める保育士の男性(30)は嘆く。別の認可園で働く保育士の妻(29)と合わせても、月約二十五万円。数年前に買った一戸建ては、三十五年ローンで月五万円ずつ返済し、長女(2つ)と次女(八カ月)の保育料に月五万円かかる。生活費を稼ぐため、妻は次女を出産後二カ月で職場復帰した。「共働きじゃないと、絶対に暮らせない」

処遇改善を求め、国会内で3月末に開かれた労働組合主催の集会=東京都千代田区永田町の衆議院第一議員会館

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 子どもの服は友達からお下がりをもらい、「ほとんど買ったことはない」。自分の服は破れるまで着てから新しい物を買い、節約のために髪の毛は自分で切っている。ゴールデンウイークは旅行に行く余裕はなく、近場の公園で過ごした。野菜や肉は高くても国産の物を選ぶなど、食費は削らないようにしている。田舎なので通勤用の車二台は手放せない。

 十年前に保育士として働き始め、昇給は年に二千円程度。四歳児の担任で、十一人を一人でみている。仕事の責任に給料が見合わないと転職を考えたこともあった。でも「他にスキルもないし、家族を養わないといけないので踏み切れなかった」。

 政府は今月十八日、「一億総活躍プラン」で保育士の給与を約六千円引き上げることを発表したが、「生活の苦しさは、そんなレベルでは足りない」。

 一方、社会福祉法人が運営する東京都内の認可園で働く女性保育士(31)の手取りは月約十五万円。実家で七十代の両親と暮らし、月三万円を家に入れ、三万円を貯金している。

 婚活のため合コンにも行くが、自分の収入が低いため相手が正社員かどうかが、まず気になる。「いつまでも親に甘えてはいけないと思うけど、このままでは自立もできない」

 子どもたちに歌やダンスを教えるため自主的に保育士向けの講習会に月一~二回通い、一万円ほどかかる。質の高い保育を目指し、誇りを持って働いている。だが指導計画書やクラス便りを作るのに残業が月に十五時間ほどあっても、園にタイムカードはなく残業代は出ない。園には無資格のパート職員もいるが時給千円ほどで、一日二時間や土曜日など限定的に働く人が多い。「時給換算だと無資格の人と変わらないと思う。むなしくなる」

 二〇一五年の厚生労働省調査によると、保育士の平均月収は約二十二万円で、全職種平均より約十一万円も低い。保育士資格を持っていても保育園で働かない「潜在保育士」は約八十万人いるが、一七年度末までに約九万人の保育士不足が見込まれる。一三年の調査では、保育士資格のある求職者が保育士として働くことを希望しない理由のトップは「賃金が希望と合わない」で47・5%だった。

 三月末に保育士でつくる労働組合などが国会内で集会を開き、規制緩和による待機児童解消策がやり玉に挙がった。「専門性の高い保育士の地位と処遇を改善するのが先。現場は人手が足りず、綱渡りで子どもの命を預かっていると、国は分かっているのか」

 保育士不足が深刻化している。小さな子の命を預かる責任の重さに比べて低すぎる賃金や、トイレに行く暇もないほどの仕事の忙しさが、保育士という職を選ばない人が増えた原因だ。「もう限界」という悲鳴が保育現場から上がっている。