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認可保育所整備で難問 杉並区側、住民ともに「子どものために」 - 東京新聞

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 公園を転用してまで認可保育所の整備を急ぐ東京都杉並区。土地の確保が難しい都市部の事情と、保育所の利用を希望する保護者や子どもをこれ以上待たせられない切羽詰まった状況がある。一方の周辺住民にとって公園は、子どもがのびのび遊べる貴重な場だ。双方とも「子どもたちのために」と動いている。折り合える解答は見いだせるか。 (石原真樹、柏崎智子)

◆住民 公園は「地域の財産」残して

 午後二時すぎ、学校を終えた子どもたちが自転車で集まってきた。「毎朝お父さんとキャッチボールしてる。ここがなくなったら、すげー困る」。小学五年の男の子がつぶやく。三年の男の子も「サッカーしたり滑り台したり。木登りもできるよ」と教えてくれた。

 杉並区が保育所用地の一つに選んだ久我山東原公園(久我山五)は二千平方メートルのまとまった広さがある。地域の中で子どもたちがボール遊びできる唯一の公園で、高齢者も散歩する。年末には自治会の餅つき大会が開かれ、住民をつなぐ役割を果たしてきた。

 二十二年前、区民農園だった民有地を住民の要望で区が購入し、公園にした。トイレや駐輪場の配置まで住民と区が話し合って作り上げた経緯があり、「地域の財産」の思いが強い。

 区の計画では、面積の約四割に当たるグラウンド部分が使えなくなる。

 「久我山の子どもと地域を守る会」の宇田川美幸さん(47)は「保育所が必要なのは分かるけれど、ここでなきゃできない経験を子どもたちから取り上げたくない」と話し、面積は小さいが利用者の少ない近隣公園に建ててはどうかと区に提案する。近くに住む大学の非常勤講師丸浜昭さん(66)も「一緒に考えたい。来年四月開所に固執せず、われわれにも時間を与えて」。

 井草地域区民センター中庭(下井草五)と向井公園(下井草三)に建てる計画の見直しを求める「井草の緑と遊び場を守る会」の横山千尋さん(48)は「学童保育に入れない子どもの居場所を守りたい」と話す。

 区の「緊急事態」の言葉にも抵抗感がある。「おどろおどろしい言葉で大事な公園を取り上げられる。もっと待機児童が多い地域があるのに、井草地域に計画が集中しているのは納得できない。造りやすいからと数合わせに使われるのはたまらない」と語った。

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◆杉並区 待機児童深刻「今やらねば」

 「今やらなければ後悔する」。五月二十一日、区が開いた保育を考えるシンポジウムで、田中良杉並区長は急ピッチで保育所を造ることへ理解を求めた。二十四日の定例記者会見でも、待機児童が増えるのを「これ以上やり過ごせない」と語った。

 認可保育所に申し込んでも、半数が入れない。事態がなかなか改善しないのは、保育所を造らなかった時期が長かったことが尾を引いている。

 一九九九年から二〇一一年までの十二年間、杉並区で認可保育所は一カ所しか増えていない。代わりに区は、保育士配置や広さの基準が甘く、ビルやマンションの一室にも造れる認可外施設で保育需要に対応する方針だった。

 「少子化だから、いずれ保育ニーズは減る、という漠然とした意識が組織の中に刷り込まれていたのだと思う」。当時都議だった田中区長自身、認可外施設を増やすことに賛成だった。しかし、区長になり、保護者が子どもの預け先を探して何十カ所も歩く「保活」の大変さや、園庭のある施設に子どもを預けたいという保護者の素朴な思いを知った。

 「認可外で臨時的にスピードある対応をすることも必要だが、同時に、ニーズの高い認可保育所を造る保育戦略が必要だった」

 昨年度は十三カ所の認可保育所新設を目指したが、実現できたのは七カ所だけ。地主との価格交渉がうまくいかないなど土地の確保がネックになった。それをクリアするため打ち出したのが、今回の区有地での整備だった。

 「急ぎすぎだと言われるが、保育所に入れずにずっと我慢してきた人たちのことも理解してほしい。公園を利用してきた人たちの反対も分かる。代替地となる空間を確保するなど全庁挙げて取り組む。都市生活は譲り合うしかない」

認可保育所> 保育士の資格や1人が世話する子どもの人数、施設面積などが国の基準を満たし、国の補助を受ける施設。定員60人以上で、ゼロ歳から就学前まで通える。保育料は所得に応じて自治体が決める。認可外施設は一般に認可より基準が甘く、東京都認証保育所など自治体独自に設置する施設と、ベビーホテルなどがある。少ない定員で民家やビルの一室に開設されることが多い。