保育士求人・転職情報も満載!保育業界について考えるブログ

保育士、保育園、保育業界に関する様々な情報をまとめています。待機児童問題や転職が多いとされる保育士の待遇問題など保育業界を取り巻く問題に鋭いメスを入れ、社会全体で解決していくキッカケ作りをしていきます。

高知県内の5市町村で「人口の社会増」 子育て支援など充実 - 高知新聞

保護者の出勤に合わせ、朝早くから登園する子どもたち(芸西村の芸西保育所)

 高知県内自治体の人口減少に歯止めがかからない中、香南市安芸郡芸西村など5市町村が、2010年10月~15年9月にかけ、転入者が転出者を上回る人口の「社会増」となった。高知市のベッドタウン化が進む香南市を除き、4町村はいずれも4千人以下の自治体だ。最も多い47人増の芸西村を含め、定住用の住宅整備や子育て支援などに力を入れる。さらに芸西村は高速道延伸など地の利も生かした。高知県は2019年に高知県全体で「社会減ゼロ」を目指している。いち早く目標を“達成”した自治体の背景を追った。

■転機は2010年度
 「社会増の流れは2010年度から。その後も2013年度を除いて増加傾向が続いています」

 芸西村健康福祉課の池田美延課長は、住民基本台帳の数字を拾い出し、うれしそうな表情になった。

 芸西村は約20年前から定住用公営住宅の整備を進め、2008年度には高知県内自治体では土佐清水市に続き、中学卒業までの医療費を無料化した。また、各家庭に生ごみ処理機導入を促し、芸西村のごみ処理費を浮かした分を2009年度から保育料減額(所得に応じ最大40%)に充てた。保育の預かり時間(午前7時半~午後6時45分)は、以前から他の自治体に比べて長めに設定している。

 池田課長は「少しずつ『共働き夫婦に優しい村』と認知され、2010年度ごろが転機になった」と振り返った。

 2014年、転入してきた30代女性は「子育てしやすい環境が引っ越しを決めた理由の一つ」と語る。データもそんな声を裏付ける。

 2014年8月以降の転入者に村への期待を尋ねた調査(46世帯回答)では、3割が「子育てのしやすさ」を挙げ、トップになった。

 さらに、高知東部自動車道開通・延伸効果も見逃せない。2014年3月、香南のいちインターチェンジ(IC、香南市野市町)―芸西西ICがつながり、国道55号経由で県庁付近まで約1時間となった。芸西村内には土佐くろしお鉄道ごめん・なはり線の駅が二つあり、先のアンケートでも「通勤・通学の便利さ」が上位に入った。

 夫の就農を契機に、高知市から5年前に転入した沢村千佳恵さん(30)=西分甲=は、子育てをしながら高知市の職場へ通い、「芸西村の環境の良さを考えると、あまり(通勤距離を)苦には思わなかった」と打ち明けた。

■「園芸立村」
 「東部自動車道が、安芸に延びる前が勝負と思っていた。企業誘致は無理でも、芸西村に住んで外へ働きに行く夫婦を支援する仕組みを考えてきた」

 2008年11月に就任した芸西村の竹内強村長は47人の社会増を導いた要因をそう振り返る。 さらに芸西村職員が「人が住む地域は村の端から端まで車で20分」と話すように、コンパクトな村づくりを進めてきた。昭和40年代には、中山間の3集落24人を、芸西村役場に近い和食地区へ集団移転させる“荒技”も使った。

 同時期から「園芸立村」へ向けた基盤整備に取り組み、花卉(かき)栽培の下地が作られ、芸西村での就農を目指して移り住む人も多い。子育て支援策の充実に加え、こうした長年の積み重ねが社会増に結び付いた。

■ハード整備も
 芸西村以外の状況はどうだろう。41人の社会増を生んだ高岡郡梼原町梼原町は中学卒業までの医療費に加え、保育料も無料化している。空き家を梼原町がリフォームした後、移住者に貸し出す事業も進めてきた。梼原高校へ町外から新入生を呼び込んだことも社会増の大きな理由だ。

 梼原町幹部は「ソフトとハード両面がそろった受け入れ態勢をつくり、人口減に立ち向かっていく」と話す。

 人口1294人の村ながら社会増(7人)を実現した北川村。中芸5町村は2009年度までに中学生までの医療費を無料化し、北川村は村営住宅整備にも力を入れてきた。北川村幹部は「子育て支援はあって当たり前。社会増が一過性に終わらないよう、子どもの通学環境整備、雇用対策など施策に広がりを持たせたい」と気を引き締める。

 また、幡多郡三原村も2011年度から中学卒業までの医療費を無料化したことに加え、将来の就農を視野にした農業研修生の受け入れが社会増へつながったようだ。

   ◆  ◆

 


 2010年10月~2015年9月の高知県全体の社会減は1万人を超えた。2005~2010年と比較すると人数は鈍化しているものの、幡多郡黒潮町に匹敵する人口が流出した。子育て支援や住宅対策、雇用創出…地域の実情を踏まえて必要な歯止め策を打つ。社会増の自治体から処方箋が見えてくる。