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1冊の本を贈ってくれた、保育園の先生へ 写真 平野太呂 - 朝日新聞

  

〈依頼人プロフィール〉

吉川春香さん 44歳 女性
東京都在住
保育士

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 忘れられない「先生」がいるとしたら、私にとってそれは保育園時代の先生です。引っ込み思案で、うまく友だちの輪に入れなかった私。いつもそんな私の手を引き、やさしく話しかけ、一緒に遊んでくれたことを覚えています。

 私が卒園して40年近く。長らくは年賀状のやりとりだけでしたが、私が成人してからお目にかかる機会がありました。それ以来、毎年手作りの梅干しやお漬物を送ってくださるようになり、一粒一粒、大切にお弁当に使わせていただく日々です。

 先生は40年間も同じ保育園で働き続け、多くの子どもたちを心から愛しました。現在は退職され、髪に白いものが目立つようになりましたが、地域の子どもたちのために遊び場を作り、先生なりのやり方で楽しく、豊かな保育を施されています。献身的な生き方とはこういうことなのだと、頭が下がる思いです。

 幼い頃から寂しがり屋だった私にとって、笑顔いっぱいの素敵な先生に出会えたことは、大きな支えとなりました。卒園から40年。紆余曲折(うよきょくせつ)して、今は私も先生と同じ保育士です。先生が私にくれた愛情を、今度は私が子どもたちにあげよう。そんな思いで始めた仕事でしたが、子どもと接するというのがどれだけ大変で難しいことか、骨身にしみて感じる毎日です。

 保育士になったばかりの頃、やんちゃでやんちゃで、どうにも手に負えない男の子に困り果てていました。同僚からも「きちんと叱らないとだめだよ」と注意されたりしたのですが、子どもの叱り方ってすごく繊細で難しい。藁(わら)にもすがる思いで先生に手紙を出し、相談したのでした。

 先生からの返事は1冊の絵本でした。主人公はいつも先生や親に怒られてばかりの男の子。けっして悪気はないのに空回りして、やりすぎてしまう男の子のことを、周囲は「暴れん坊」だとして叱り続けます。「一生懸命やっているのに、なんで自分は怒られてしまうんだろう?」。そんな心の声に気付いた先生が、男の子の行き場のない気持ちを受け止め、めいっぱい褒めてあげるというお話。

 大人に見える子どもの行為は、その子の心のすべてを映しているとは限らない。子どもを100%受け入れない限り、その心は見えてこない。1冊の絵本を通して、先生は大切なことを教えてくれました。思えば先生も同じように、子どもだった私たちを真正面から受け止めてくれていました。なんて懐が深く、強い人。私はまだまだ未熟ですが、先生の背中を追っていけるよう、頑張っています。

 大人になってもなお、助けてもらってばかりの先生に、ぜひお礼がしたいと思っています。いつも誰かに与える一方の先生。私はあまり料理が得意ではないのですが、おいしいお弁当を作って、「たまにはゆっくり休んでくださいね」と伝えたいのです。先生がいつも子どもたちと遊んでいる原っぱで一緒に食べたら気持ちがいいだろうな。

 先生は今年で70歳。山の中にある湖畔の家で静かに暮らしておられます。退職されたご主人と一緒に季節ごとに野菜を育てるのが楽しみだとか。暮らしぶりはつつましく、質素。素朴という言葉がぴったりの方です。お肉はあまり召し上がらないと思いますので、新鮮な野菜を中心とした献立だと、喜んでくれるかなと想像します。どうぞよろしくお願いいたします。

お米に枝豆を混ぜて炊くと豆の緑色がきれいに出ません。生の枝豆をフードプロセッサーで細かくしてごま油で和えたものを、炊き上がったごはんに混ぜて蒸すと、熱を加えても鮮やかな緑色を保てます

<献立>
おむすび2種(梅ちりめん、枝豆ごはん)
イワシのごま焼き
切り干し大根とセロリとピーナツのスパイスオイルあえ
ミニトマトの大葉ジェノベーゼあえ
きんちゃく煮卵
伏見唐辛子の焼き浸し
ゆでとうもろこし

<あゆみさんからのメッセージ>

 大切な恩師へ贈るお弁当。現在は自然豊かな土地で自家菜園をしたり、保存食を手作りしながら暮らしていらっしゃるということで、毎年送られてくるという梅干しや新鮮なお野菜を使うイメージでお弁当を考えました。

 おむすびは枝豆ごはんと梅ちりめんの2種を竹皮に包んで。おかずは素朴でありつつ、少しだけひねりを加えた味付けを意識して作りました。これからの季節に手に入りやすい大葉を使ったジェノベーゼや、ちょっとしたあえ物に使いやすいスパイスオイルなど、さりげなく味の変化をつけられる献立です。季節のおいしさを一緒に楽しんでいただけたらうれしいです。

■枝豆ごはん

*材料(作りやすい分量)
白米 2合
塩  小さじ1強
枝豆 1袋
太白ごま油  大さじ2~3

*作り方

1 枝豆は生のまま房から豆を取り出し、フードプロセッサーで砕く。
  砕いた豆をボウルに入れ、太白ごま油を加えて全体に油が絡むようにあえる。

2 白米は研いで水切りしてから30分ほど浸水させ、塩を加えて炊く。

3 米が炊けたら1の枝豆大さじ山盛り2杯を平らに広げてのせる。
  10分ほど蒸らしてから全体を混ぜてできあがり。

(ライター/小林百合子)

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