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待機児童解消と保育の質維持、首都圏の自治体が両立に苦慮 - 日本経済新聞

認可保育所の定員は施設の面積や保育士の人数など、各自治体が定める基準によって決まる。日本経済新聞社の調査では、東京都区部と首都圏の政令市のうち24区市が質の高い保育を目指して、国より厳しい基準を設けていることが分かった。待機児童問題が深刻化する中、自治体は質の高い保育の維持と受け入れ人数拡大の両立を求められている。

 0~1歳の保育室は1人当たり3.3平方メートル、1歳児6人に保育士1人――。認可保育所の最低基準は厚生労働省が規定し、これに沿って各自治体がルールを定める。

 東京都区部など大都市圏では子どもの安全確保など、保育の質を高めるため大半の自治体が国より厳しい基準を設けている。東京都は2005年度まで、国より厳しい基準を採用する自治体に補助金を出していた。都の補助金が終了した後は、多くの区が都の旧基準に基づき事業者に補助している。

 中央区の公立認可保育所の基準は、0歳児1人当たり6平方メートル以上、1歳児で3.5平方メートル以上。千葉市も1~2歳児5人に対し、保育士・保育教諭1人を配置している。

 杉並区は0歳の乳児室で1人当たり5平方メートル、1歳児5人に保育士1人の配置を規定する。子ども1人当たりの面積を減らせば、保育定員を増やせるが、杉並区では「保育士は今でも手いっぱい。定員がもう1人増えると保育士に負荷がかかってしまう」と話す。

 政府は3月末、「保育園落ちた日本死ね」という匿名のブログが波紋を呼んだのを受け、待機児童解消に向けた緊急対策を発表。国より厳しい基準を設ける自治体に対し、基準を緩和して1人でも多くの子どもを受け入れるよう要請した。

 だが、自治体側は慎重な姿勢が目立つ。世田谷区は0歳児1人当たり5平方メートル以上の基準緩和を検討したが「建物の増築などをしない限り、効果は一時的なものになる」とみている。国の基準に合わせて0歳児の定員を増やしても「(0歳児が1歳児クラスに移る)翌年には1歳児の募集枠が減る」ためだ。

 認可保育所で1歳児5人につき保育士1人を配置する目黒区も「保育の質や児童の安全性を確保するため、基準の緩和は検討していない」と回答した。

 一方、内々に緩和を検討し始めた区もある。現在0歳児1人当たり5平方メートル以上と定めているある区は、民間事業者に他の自治体で運営する保育所の状況を聞き取ったり、保育士から意見を聞いたりしている。

 基準緩和は子ども1人当たりのスペースが減り、保育士1人当たりの子どもの数が増えるだけに、保護者から不安の声や批判も多い。ただ区の職員は「子どもの預け先が見つからず、途方に暮れている人の存在も忘れてはいけない」と苦渋の表情を見せる。待機児童問題と保育の質のはざまで、自治体は難しい判断を迫られる。